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幼女と歌い手、何処かへ旅立った医者が暮らす場所
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前半の部分がシリアスだなぁと思った貴方。
 計 画 通 り (ぁ)
題名どおりな話です。



押し寄せる群集。
武器を持つ人達。
ノワールは囲まれていた。
怯える子供達を壁に預けて、敵から近づけさせない。
ビリビリと光の電光が壁を作り和紙を中心に術が展開される。
どうしてこんなことになったのかノワールは状況を理解するのに精一杯で頭が追い付かない。
仕事を終えてから、ご飯の支度をしている合間に銃声が聞こえて……
眼を瞬く暇を与えず取り囲まれる。この国は非常識で狂っていると思う。
けど今日以上の非常識は今まで味わったことがない。
ノワールは足元に転がっている同胞を見た。
血だらけで正直生きていることが奇跡に近い。
和紙を貼りつけて傷を塞ぐとしても時間稼ぎが必要だと分かる。
だが敵の方も魔術対抗の鎧まで丁寧に装備していて簡単に立ち去らせることは出来ない。
ぎりっ、ノワールは口を噛みしめる。迷っている暇は無かった。

「ノワールが命ずる。式紙達、私の家族を頼みましたよ。」

和紙を壁に貼りつけて爆風を巻き起こす。
破片か飛び散り粉塵が頬にかかる。背後に突き刺さるのは不安な眼差し。
ノワールは安心させるように笑いかけた。
そして指を差して「逃げなさい」と示す。
子供達は互いの顔を見合わせて悩んでいるが分が悪いことを知り駆ける。
獣の形をしている式紙は道しるべとしてノワールの横を過ぎて飛ぶ。
遠ざかる気配の感触を受け、追撃を試みる敵に炎の和紙を放つ。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

肉の焦げる臭いが鼻につく。
崩れ落ちる敵の最後は見ずに同胞を担ぐ。
同じくらいある体格を運ぶのは一苦労。
まだ仕事から戻ってきていない子供がいるのも厄介な話。
家で敵が待ち伏せされている可能性だってある。
悩むノワールに追い討ちをかけるように敵が足を踏みいる。
結界として張っていた和紙が限界なのか悲鳴をあげ震える。

「仕方がないか…」

同胞を運ばせる時間は与えてくれないらしい。
ノワールの住む街は人と森の民の対立が激しい場所。
それを知って街の中に身を置いていたのだから、こんな日が来ることも予測はつく。
「しかし…誰の差し金?
私は街に暮らせるようにこの国に尽くしてきたつもりなんですけどね…あぁ、もうお払い箱?」

それが答えだと言うように敵の一人が結界を破って前に躍り出た。
ノワールは同胞を突き放して和紙から細身のレイピアを具現化――
相手の剣先と重ね合わせるように受けとめる。
そのまま斜めに傾けて剣を滑らして敵の腹に蹴りを放つ。
ある程度、相手と離れる。改めてノワールは単身で攻めた敵を見つめる。
全体に甲冑で隠された素顔。
胸元には金属のホースが幾重にも繋がれ真ん中の赤い宝玉が心臓みたいに揺れる。
そこから魔力の流れが見えた。ノワールは舌打ちをする。

「強化人間……対エルフ用…」同胞が倒された原因が分かる。
対エルフ用の武器はノワール達にとって脅威となる存在。
精霊達の力を無効化にさせ、武器となる矢は頑丈な鎧になって弾き返してしまう。
ただし強化人間には致命的な弱点がある。
この鎧を操るにはそれなりに人の限界以上の力が必要な為に薬を使い続ける。
そのため強化された人間は強靭な精神力が必要となる。
1000人試して一人の適合者がいれば運の良い方。
また、強化人間は短命でもある。実働させて三日間保てない。それ以上は精神崩壊に繋がる。

「さて貴方の命はあと幾つなのでしょうかね?」

「………」

「まあどちらにしても……生きるか死ぬか……」

ノワールの足が下がる。
敵は足を踏み出す。
周囲を見渡して敵の数を確認する。良い具合に風が室内を冷やす。
タイミングを見計らい、ノワールは和紙を投げる。敵も一斉に攻めてくる。
ノワールが投げた和紙の先は足元。
「収集」和紙が冷気を吸い込み、氷の柱を作る。
魔力の風が流れ対象者に触れた瞬間、
カチカチと音を立てて下半身から全域に氷が忍びよる。
敵の攻める足が不自然な格好で止まる。


氷のオブジェの完成―。


「案外呆気ないものですね。」ノワールは踵を返す。


バキバキ――――


内側から外へと割れる音。
振り返るノワールの眼に映ったのは幾重にも亀裂が走る氷の物体。

「この場所は確か―――」

ノワールの声をかきけすほどの爆発音。
氷の破片が周囲に飛び散りノワールの頬を掠める。血が垂れる。
蒸気みたいに漂う煙が晴れる時、甲冑を象るヒトがいた。
ノワールは笑う。

「簡単にはいかないですか…」

この世の覇者みたいに仁王立ちした相手は威圧的な空気が漂う。
敵が腕を上げた。急速する風の流れからノワールは咄嗟に右ステップを踏む。

ビュッ――――――

敵が腕を下ろすとノワールの直感通り風がうねりをあげて猛突進。
巻き込まれた家具達は木っ端みじんに消し飛ぶ。
くるりと身体を回転させて勢いをつけて敵に向けて全力を注いだ。


「こんな感じかな。」

「ノワール何書いているの?」

ノワールは先輩の言葉にメモ帳から顔をあげ振り向き笑いかける。

「私の武勇伝物語。ちょっとした乙女の夢よ。」

このあとはバシバシと敵を倒してミネ・フジコみたいなスタイルと
クールな感じで孤児の子供達を救うヒーロになるのと。
ノワールが言うとシスターは「甘いわね」と指を示す。

「そんなんじゃ、面白くはないわ。どうせなら……」


「はぁはぁ。」

ノワールは死んだ敵を見下ろした。顔を覆い隠していた仮面をそっと外す。
どんな敵がこんなにも自分を悩ませたのか知りたかったから。
戦った相手の顔ぐらい拝んでも罰は当たるまい。
目に飛び込んでくるのは愛しい者の死。

「ど、どうして。」

ふらりと足をふらつかせ高鳴る胸を抑える。
恋人は街中でひっそりと暮らしている筈。
巻き込まないように別れ交わしたのに。
まさか上の者に知られていた。
ノワールは自分を追い込むために仕掛けられたことを瞬時に悟る。
芽生えていく憎悪。仮面をもつ指先が震えていき。

「こんな世界があるからいけないんです。私はこの世界の神になる。」


「・・・どこかのパクリっぽいんだけど?」

「ええー。結構良い案だと思ったんだけどね。」

シスターは残念そうに肩を落としていると、今度は別の先輩が二人の元に歩む。

「二人とも、お話というのは読者がドキドキするような展開が必要なのよ。」

「「なるほど!」」

「私が例をだしてあげましょう。」

熟年のシスターは指をビシと立てると口を開く。


「はぁはぁ。」

ノワールは死んだ敵を見下ろした。顔を覆い隠していた仮面をそっと外す。
どんな敵がこんなにも自分を悩ませたのか知りたかったから。
戦った相手の顔ぐらい拝んでも罰は当たるまい。
目に飛び込んでくるのは自分を殺すように仕掛けた上の人間だった。
一瞬、ノワールは見間違いかと考えるが、
眩いばかりの頭のてかりがまさしく本物だと告げている。
嫌みったらしい金歯がまさに上の人間の象徴を示すもの。

「一体、誰が私を殺すように。」

「ふふふ、俺ですよ。ノワール。」

倒れていた筈の同胞が立ち上がる。

「貴方が敵だったんですか。それにしては随分なやられかたですね。」

美形と称される森の民でもここまで顔面を殴られたらかたなしである。
鼻血を垂らしているところがさらにマイナスポイント。
綺麗なものをこよなく愛するノワールは目を逸らす。

「それで私の命を狙った理由はなんです?」

「それはノワールが俺の眼鏡勇者(?)物語の第一巻から最終巻をぬす…」


「ストーーーップ!!ご近所さんのネタを使わないで。
しかもシリアスな展開の前置きがぶち壊されてるよ。」

「クラッシャーもまた一つの技よ。」

ノワールは思う。
この先輩二人組みに物語を書かせたらまとまりのないものになると。
もう既に物語を書く気分は失ったのかノワールはメモ帳を閉じた。
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