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幼女と歌い手、何処かへ旅立った医者が暮らす場所
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「アライアはどうして料理が出来るの?」

この質問にアライアの家族の一人、もとい犬のように拾われた
双子の片割れのラルアーノが答えようか。

それはまだアライアがまだ故郷でいたころの話。
あの頃は暗殺者として働いていたんだっけな。
俺は妹のライアーノと一緒に待っていたんだけど、
流石に毎日食べさせて貰っているのに恩返しも出来ないのは悪いと思ってさ。
アライアのために晩御飯を用意してあげようという優しさから生まれたんだ。

んで、アライアの家族からも了解を貰って
(上の連中はハラハラしていたけど俺達はもう15だ。
一人でご飯だって作ることなんて簡単)
台所を借りたのは良かったんだけどさ、
いざ何か作ろうと思えば案はまとまらないもの。

「兄さん。何を食べさせたらアライアは喜ぶかな。」

「そうだな……そもそも俺達、アライアの好きなもの聞いた事があったか?」

「あ。」

いきなり困難という名の壁にぶつかった。
まあ尋ねたとしても「食べれるものなら」と簡単に答えられそうだから、
なんの参考にもならないのは目が見えていることだけど。
俺は野菜を手にするまま考えこむ。

「無難に鍋、カレー、肉じゃかとか?」

「最後は東国に伝わる料理だよね。分かります。」

「そんなの作れるかー、って突っ込みほしかったかも。」

「ユーモアな返事を兼ね備えているわけじゃないからね。」

ああ双子なのにこの意見の食い違いに俺は涙する。
双子だからって何でも通じ合えると思ったら大間違いだよ。こんちくしょ。
と、俺がいじけている間に妹の行動は手早い。
いつの間にかガスに火をつけているのだから。

「ちょっ、もう何作るか…」

「決めたわよ。」

さらりとなんでもないようにいう妹。

「まあ兄さんは手伝わなくていいわよ。
やっぱり私は女の子なんだから料理が出来て当然よ。
それでアライアに褒めてもらうの。
で、アライアの給料日に服とか買って……」

命の恩人にたかるのは間違っているとお兄さんは思うんだ。
目を細めさせてみるが妹はアウト・オブ・眼中!
おかしいな。なんだか目から汗が滲み出てきた。
突っ込みたい気分な俺から完全に意識を逸らして、
妹は料理を作り出しはじめる。
ザクザクと手際よく野菜を切る妹に「おお」と感動しつつも、
俺は完成品が出来るまで邪魔しないように本でも読む事にした。



晩御飯の時間。

「新しい毒の開発?」

仕事から帰ってきたアライアの第一声はこれである。
俺は「い、いや、一応晩御飯のつもりだよ。」とフォローをしているが苦しいものがある。
紫のスープの表面に浮かぶのは得体のしれない緑色の…あれカビじゃないかな。
キノコもあるんだけど虹色のカラフル…明らかに毒入りですと象徴してるし。
お肉を焼いたつもりなんだろうけど焦げて黒いし、
臭いも相当…これを毒だといわずになんだろうかと言いたくなるのは分かる。
だが当の作った本人は胸をはり自慢げに
「私が作ったのよ」と、喜んでいる。
一度、味見をすることを誰かから教わったほうが良いんじゃないかな。

「楽しいとは何?」と、感情表現皆無なはずのアライアでさえ、
額からだらだらと汗が流れている。
多分、動物的直感で『これは危険物』だと、いうことが肌で感じ取れているんだね。
俺も一緒に作るべきだったかと後悔したが遅い。
出来てしまったのだから妹は無理矢理でも食べさせるに決まってる。

「食べないといけないのか?」

「うん!ほらアライアお腹すいてるでしょ。」

「食べれる?」

「なに?私の料理が気に食わないっていうの。
ほら遠慮せずに食べて、食べて。」

槍みたいにアライアの口めがけてスプーンで突いた。

「んぐっ!?」

なんて行動力がある妹。
むしろアライアに殺されないかなぁと心配したが、
その心配は無用だった。
何故ならアライアが魂抜かれたように真っ白になっているから。
「真っ白に燃えつきたぜ」のあの名言みたいな感じ。
硬直しているアライアに俺は手を振る。

「おーい、アライア、アライア!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「もうアライアったら、そんなに美味しいからって気絶しなくても。」

鬼!?悪魔!?
妹をさげすみたい気持ちが支配されたけど
俺にはそんな妹を注意してやることも出来ないんだ。
滲みでそうな涙を払うように俺は目尻を払う素振りをみせる。
高笑いする妹がなんだか魔王を連想させた。

実はその日からアライアは自分で料理を作るようになった。
必死な様子からは妹の料理を二度と食べたくない思いが伝わる。
グッジョッブアライア。俺はそっと親指を立てつつも
その様子を生暖かく見守る事にした。
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